アミノレブリン酸(5-ALA)というアミノ酸に着目、5-ALAを用いることでがん細胞のみを可視化することが可能です。
この原理を応用して、我々はこれまで 5-ALAを用いた光線力学的診断を行い、良好な診断成績を得ています。
これを踏まえて本研究では5-ALAを用いた新たな蛍光細胞診の開発・研究を行っています。
5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた新たな細胞診の研究
口腔内感染制御の研究
口腔内の病原微生物は様々な口腔感染症のみならず誤嚥性肺炎や感染性心内膜炎といった全身疾患を引き起こします。このことから、口腔内の健康維持の重要性が近年、医療現場において注目されています。
従来、口腔感染症は様々な抗菌薬により治療が行われてきましたが、長期の使用や繰り返しの使用によってこれらの薬剤に耐性を持った耐性株の出現が問題となっています。耐性株は同じ作用機序を持つ他の抗真菌薬に対しても交叉耐性を持つので、治療が非常に困難となります。
そこで私たちは、従来の抗菌薬とは異なる作用機序で病原微生物に効果を示す405nmレーザー光の照射や植物由来の天然抽出物を用いた、新たな口腔感染症の治療法および予防法の開発を行っています。
https://www.hindawi.com/journals/ijp/2014/387215/
レプチンの皮膚・口腔粘膜創傷治癒促進薬としての研究
レプチンは主に白色脂肪細胞によって産生される抗肥満ホルモンです。今までに胎盤や胃、骨格筋、脳、下垂体などで産生されることが確認されています。また、生理作用として脂質代謝、造血、卵巣機能、骨形成、血管新生、創傷治癒などが知られています。レプチン受容体(Ob-R)は視床下部、脂肪組織、骨格筋細胞、肝細胞など様々な組織で発現していることも知られています。われわれはこのようなレプチンが口腔粘膜潰瘍の創傷治癒を促進する可能性を報告いたしました。
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0101984
またレプチンを皮膚潰瘍を作成したマウスの背中に貼布したところ、有意にレプチンを貼布した群で潰瘍の縮小傾向が認められました。その潰瘍直下の血管数を計測したところ、レプチンを貼布した群で有意に血管数の増加が認められました。また、ヒト皮膚角化細胞を使用した実験において、レプチンが細胞増殖と細胞分化および細胞遊走を有意に促進しました。以上の結果より、レプチンが皮膚潰瘍の治癒を有意に促進したことを発見いたしました。
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0121242
レプチンの歯胚・骨に対する影響の研究
抗肥満ホルモンとして知られるレプチンは、近年その多彩な生理作用が報告されてきているが、これまでに歯の形成に関する報告はなく、われわれがマウスの鐘状期後期、根形成期において、エナメル芽細胞、象牙芽細胞、歯乳頭細胞などにレプチンの発現を確認した。また、鐘状期後期ヒト歯胚においても同様の発現傾向がを確認、さらに、歯乳頭の上段1/3においてはレプチン陽性細胞およびCD31、CD34陽性細胞が中段、下段より有意に多く発現してることを発見した。
歯胚の基質合成期にあたる鐘状期後期、根形成期にレプチンの発現を認め、また鐘状期後期ヒト歯胚においてレプチンを発現している象牙芽細胞に近接している歯乳頭により多くの血管が分布していることが明らかとした。
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00418-011-0789-z
また、われわれはレプチンが骨代謝に対して影響していることを発見し、骨粗鬆症に対して新たな治療法を見出した。
https://www.omicsonline.org/open-access/possible-involvement-of-leptin-in-the-elevated-osteoblastic-activity-observed-in-high-turnover-type-osteoporosis-of-ovariectomized-mice-2161-0479.1000105.php?aid=33248
メラトニンの歯胚・骨・唾液腺に対する影響の研究
メラトニンはウシ松果体より分離・精製された概日リズム調節ホルモンであり、現在までに概日リズムの調節以外にも体温調節作用や免疫賦活作用など様々な生理作用を持つことが報告されている。また近年、松果体だけでなく、網膜や水晶体、卵巣、消化管、免疫系細胞においてもメラトニンが合成・分泌されていることが報告されており、その受容体についても様々な臓器での発現が報告されつつある。われわれは歯胚、歯乳頭、歯髄に受容体の発現を確認した。
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00418-010-0698-6
http://www.mdpi.com/1422-0067/15/10/17304
さらに最近、唾液中でもメラトニンの存在が確認されている。われわれは、メラトニン合成酵素であるarylalkylamine N-acetyltransferase (AANAT)およびhydroxyindole-O-methyltransferase (HIOMT)のラットおよびヒト唾液腺における発現を確認した。
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00418-011-0800-8
放射線性口腔粘膜障害に対するメラトニンの 予防効果
強い抗酸化作用を有するメラトニンが、放射線照射に伴う口腔粘膜障害に対し、予防効果あるいは治療効果を有するか否かにつき検討を行い、われわれはマウスに対する放射線照射の結果から、メラトニン投与により放射線性口腔粘膜障害が軽減できる可能性を見出した。また、そのメカニズムにメラトニンによる放射線性アポトーシス誘導の抑制、細胞増殖が関与していることを発見した。
iPS細胞を用いた新たな分化誘導法の研究
徳島大学歯学部との共同研究により当科ではこれまで世界で初めて口腔粘膜より樹立したiPS細胞を用いた新たな分化誘導法を確立してきた。今後は、本法をiPS細胞の品質評価に応用するとともに分化誘導メカニズムの解明を目指している。
世界中でiPS細胞技術による再生医療に向けた研究が行われている中、当科の研究が臨床応用への大きな手助けになるように今後とも着実に研究を進めている。
ヒト歯髄幹細胞を細胞源とした再生医療研究
多分化能および高い増殖能をもつ歯髄幹細胞から細胞シートを作製し、さらにこれを3次元培養することにより3次元細胞組織体を作製、従来のシー トと比較して石灰化基質形成能が向上し、また骨関連遺伝子の発現が促進したことから、次世代の骨再生療法と して期待している。
http://www.mdpi.com/1422-0067/19/7/1846
歯髄幹細胞の効率的回収を可能とする新規凍結保存法の開発
本研究では、歯髄幹細胞の簡便な回収と確実な保存を可能とする新規凍結保存法の開発を試みており、抜去された智歯の歯髄組織を細切し、培養ディッシュ上で培養した後に凍結保存する群(培養凍結群)と即時に凍結する群(即時凍結群)の2群に分け、組織片を解凍後再度培養し、組織片からの細胞遊走の有無を検討した。凍結保存前に歯髄組織片を短期間培養することにより凍結保存組織より歯髄幹細胞を効率的に回収でき、また、回収した細胞は間葉系幹細胞の特性を有していることが示した。
http://www.mdpi.com/1422-0067/19/7/1846